
午後から記録的な雷雨がありました。
子供達は下校を中止して学校で待機するほどの。
雨が止み、子供達も無事帰宅。
まだ降りそうな空模様なのに、小5の長女は「図書館に行く」と、友達と出かけて行きました。
夕方のチャイムが鳴り、帰ってきた長女。
鳥の雛がひっくり返ってたからうつぶせに戻して土のところに置いておいた。ハトかな?何だかよく分からない鳥なんだけど、ずでーん!って今落ちましたーって感じに尻もちついて歩くのも大変そうな感じだった。
と早口で説明してきました。

…で?どうしたいの?
もう帰る時間だから帰ってきちゃったけど、拾いに行きたいの。
よし行こう。
ただの巣立ち雛なら拾ってはいけないということは、鳥が大好きな長女なのでよく分かっています。
野鳥の雛を拾った
もしもの時に備え、プラケースとタオルを持って自転車で公園に行きました。
そこにいたのは、
…ほぼ死体じゃないですか?
雨に打たれたのか、身体はびしょびしょ。
体中にアリがたかっていました。
でもかすかに動いていて、足はギューッと近くの草を握りしめています。
これが何の鳥なのか全然分からないけれど、親らしき鳥の姿は周りに一切ありません。
この様子だと明日の朝まで持たないかもしれないけど、ここでアリに食べられながら死んでいくよりはと思い、保護することにしました。

はい!軍手どうぞ!
準備が良いw
幼児用の軍手をはめて、タオルを敷いたプラケースに鳥を入れて持ち帰りました。
ムクドリなのか、ヒヨドリなのか…もしかしてカラス?なんて謎ばかりですが、とりあえず体中のアリを古い化粧筆ではらい落とし、家にあったシリンジでふやかしたドッグフードとうずらのぶんじの餌(ラウディブッシュ)を少し水で溶いたものを飲ませました。
あとはひたすら保温。
うずらのぶんじを孵化させた時に使った電気毛布で、少し隙間を空けて包みました。
その間に町中にいそうな野鳥の雛を画像検索。
近所だと、ムクドリ・ヒヨドリ、そして最近はオナガがやけにたくさんいます。
…オナガ??
徐々に体が乾き、羽がフワッとしてくると、オナガの特徴である後頭部の白い輪っかが登場。
完全に乾いたら自分から動き出すようになり、電気毛布にはもう包まれようとしません。
人間の手や肩に止まって、タイミングを見計らって飛ぶようになりました。
「誘拐された!助けて!」
と言わんばかりに、大きな声でお母さんを呼んでいます。
ここまでしっかり育っているなら明日の朝、公園に戻しても大丈夫そう。
きっと悪いタイミングで巣立ちと雷雨が重なってしまったのでしょう。
お母さんが待っていてくれるといいけど…。
オナガのヘルパー行動
お母さんがちゃんと待っていて、人間に一晩保護された雛を受け入れてくれるといいな…と思いつつ、オナガの巣立ちについて調べていると、興味深い情報を見つけました。
オナガのヘルパー行動。
通常、鳥の雛はその親が育てますが、オナガの場合、両親以外に前年に生まれた若鳥や、つがいになれなかった同じ種の仲間が育雛を手伝うのだそうです。
それならばきっと元いた公園に仲間がいるはず!と期待が生まれました。
翌朝のこと
オナガはダンボールの中で頑張っていてくれました。
夜遅くまで興奮して呼び鳴きをしていましたが、鳥は暗くすればすぐに寝るので、ぶつかっても危なくないダンボールなどに入れて空気の通り道を確保してフタをすればわりとすんなり寝てくれます。
目にも力がありますが右側の目は少し炎症を起こしているのか、腫れぼったい感じでほとんど瞑っています。
猫に処方されていたタリビッドを点眼したら、わりとすぐに右目もしっかり開くようになりました。
昨日水分と餌をほんの少し摂っただけなので、朝はふやかしたドッグフードにビタミン剤(ネクトンS)を混ぜて強制給餌しました。
昨日よりよく食べてくれて良かった。
泣き長女(鳥好き)とドライな次女(獣医志望)。
元いた公園へ
公園に着き、ダンボールから出すと、子オナガが大きな声で鳴きました。
すると、公園のあちらこちらからオナガの声が聞こえてきました。
一体何羽いるのだろうかと驚くほどたくさんの声が近付いてきて、子オナガは長女の手から飛び立ち、近くの木に止まりました。
寂しくて泣いていた長女も、自分の手から飛び立ち、迎えにきた仲間達を見て納得できた模様。
公園で体操をしているお年寄りに褒められて、そのお年寄り達が毎朝見守っている抱卵中の鳩も見せてもらって、夏休み前に何だか特別な朝を過ごしたみたい。
巣立ち雛は拾わない
春から夏にかけて多くの野鳥の雛が巣立ちの時を迎えます。
換羽も終わっていない、とても飛べそうもないような状態で巣立ちをする種類も多いので、つい保護してあげたくなりますが、ここは我慢。
きっとすぐ近くに親鳥がいて、巣立ちを見守っています。
【ヒナは拾わないでね】毎年恒例、鳥のヒナが巣立つ季節がやってまいりました。あまりにも飛べない雰囲気のヒナを見つけて、可哀想でついつい…実は「初めてのおつかい」よろしく親がちゃんと見ているから大丈夫なんです!ページは野鳥の会に飛びます→https://t.co/fwl7xB3q4O pic.twitter.com/KhGCZ6YDtw
— 日本自然保護協会(NACS-J) (@NACSJ) 2017年4月24日
しかし今回の様に放っておいたら間違いなく死んでしまうケースの場合、一時保護しても良いのではないかと思います。
今回は特にそう思いました。
冷たい雨に打たれてアリに噛まれながら死んでいくよりは、ほんの数時間だけでも安らかに…と思って保護した結果、翌朝には仲間の元へ返すことが出来て本当に良かった。
よく「人間のニオイがつくと親が育てなくなる」と言いますが、鳥は嗅覚がそれほど良くないので、犬や猫の様に雛についた人間のニオイは分からないとも言われています。
現にオナガはきちんと仲間の元へ帰れたし。
今回はオナガの共同繁殖(ヘルパー行動)に人間もちょっと参加させてもらった感じ。
その後の我が子
家に帰った子供達。
次女はあっさりしたもので、「早起きしたからテレビ見放題!」と、録画していた妖怪ウォッチを見まくりウハウハ。
長女はというと、時間が経つにつれて寂しさがつのり、昨日瀕死の状態から飛べるようになるまで世話をしたお風呂場が空っぽになっているのを見て号泣。
あと10分で登校時間というのに泣き止まず、自分でも困っていました。
オナガが残した唯一の羽。
泣きながら私に見せて、グスグス言いながら学校へ行きました。
心配した先生から電話がかかってこないといいけど(笑)