はじめにお読みください

腎不全とリンとカルシウム、ビタミンDの関係【腎性二次性上皮小体機能亢進症】

腎不全治療中のたみ。
治療2年目に入り、最近リンの数値が上がってきました(基準値上限6.8のところ、6.7)。

そして治療2年10ヶ月目の2019年1月末現在、リンの数値は今までで一番高い7.1。
リンを減らす方法は詳しくは後述しますが、市販のサプリや活性炭だけではどうにも対処しきれなくなってきたのが現状です。

さて、リンが高いとどうして悪いのか、漠然としか理解していないと長く腎臓病の治療をする中できっと躓く時がくると思いますので、ざっくり予習しておきましょう。

とっても複雑で奥が深く、多分一回読んでもよく分からないと思いますけど(私もまだ混乱中)。

腎臓の働きについて

「残された腎機能をいかに長く維持していくか」というのが腎不全と診断された犬の飼い主の大きな課題。

そのために腎臓への負担を極力減らした低たんぱく・低リンの腎臓用処方食を食べさせるのが第一の治療となります。
血液検査を受け、BUNが上がったとか下がったとかで一喜一憂すると思いますが、BUN(尿素窒素)は腎臓で濾過しきれなかったたんぱく質由来の老廃物のこと。
これが出来るだけ少なくなるように腎臓食(低たんぱく食)を食べさせます。
このあたりは腎不全治療の基本中の基本なのでほとんどの方が理解していると思いますが、問題は「リン」について。

たみが毎月受けている血液検査では、

  • BUN(基準値9~30)
  • Cre(基準値0.5~1.8)
  • リン(基準値2.5~6.8)
  • カリウム(基準値3.9~5.5)
  • ナトリウム(基準値144~160)

大体この5項目+αを計測して腎機能の変化を調べています。

この中でBUN、クレアチニンと並んで重要視されるのが「リン」。
基準値内にいる間はスルーされがちですが、上昇を始めると「リンを下げなければいけない」と診察室がザワザワし始めます。

それは何故か。
リンが今後の治療を左右すると言っても過言ではないから。
海外の論文などを読むと、たんぱく質よりもむしろリンを制限することに重きを置けと書いてあるものもあるくらい。

腎臓病とリン・カルシウムの関係

腎臓の仕事はたんぱく質の濾過だけではありません。

今回理解したいのは、腎臓病とリンとカルシウムの関係について。
というわけで下の2つのポイントは必ずおさえておきたい。

  • 腎機能が低下すると、本来であればオシッコで排出されるはずのリンが排出されずに血中に留まります(リンの数値の上昇=高リン)
  • 体内に入ったビタミンDは腎臓(と肝臓)で活性型ビタミンDに変化し、腸管内のカルシウムの吸収を促します(ビタミンDは腎臓で活性型ビタミンDに変化して初めて作用出来るようになる)。
    腎機能が低下すると、ビタミンDの活性化がうまく出来なくなり、血中のカルシウムが低下します。

リンはカルシウムとくっつく性質があるため、血中にリンが増えると血中のカルシウムとのバランスをとるために「カルシウムが少ないですよー!」という上皮小体ホルモン(PTH)が分泌され、こともあろうか自分の骨を溶かしてカルシウムを補おうとします。

これが「腎性二次性上皮小体機能亢進症」と呼ばれる腎臓病の合併症のひとつ。

腎性二次性上皮小体機能亢進症が進行すると、高リン・高カルシウムの状態が継続し、腎臓の中で石灰化を起こします。
ただでさえヨボヨボの腎臓が石灰化により更に機能を低下させるという悪循環。

おそらくたみはこの状態に陥っているのではないかとのことでした。

上皮小体機能亢進症は、上皮小体そのものの異常によるものと、腎臓病などが原因で起こる二次性上皮小体機能亢進症があります。
たみの場合は腎不全が原因のため、「腎性二次性上皮小体機能亢進症」という病名になります。

犬の腎性二次性上皮小体機能亢進症について調べてもあまり情報がないのは、「腎不全の犬の余命は数ヶ月~1年」と言われていることから推測するに、そもそも二次性上皮小体機能亢進症を発症するまで長生きしないという現状があるからなのかもしれません。
さあみなさん、「腎性二次性上皮小体機能亢進症」について頭を抱えるくらい長きにわたり腎臓病と付き合いましょう。

腎性二次性上皮小体機能亢進症の治療

腎性二次性上皮小体機能亢進症の治療=高リン・高カルシウムの状態から脱すること。

そのために必要なのは、

  • 食事療法
  • リン吸着剤の使用
  • 活性型ビタミンDの投与

食事療法は低たんぱく・低リンの腎臓食のみを与えているので既にやってる。
リン吸着剤ももう使ってる。
活性型ビタミンDは今のところはまだやらない(後述します)。

…???
これ以上どうすりゃいいの?

というわけで

こんな風にウジウジしていた私です。

ですがね、たみちゃんの先生はすごい。
こんな私に、別に先生の前でウジウジしていたわけじゃないのにたみの検査結果を見て先生の方から新しい提案をしてくれました。

獣医さん

ホスレノール知ってますか?
し・り・ま・せ・ん!(食い気味に

知りませんと言いながらなんかどこかで聞いたような…とは思っていたのですが、老犬介護ボケの脳みそはすぐには起動しませんでした。

あとで思い出したのが、人間ではどんな治療をするんだ?と思って調べていた時に見かけた薬の名前でした。
そう、ホスレノールは人間用。
動物病院の薬のほとんどは人間用ですけどね。

ホスレノールについて

たみはこれまでレンジアレンというリン吸着剤を使ってきました。
食事の味の邪魔をしないこと、他の薬(一部の薬を除く)やサプリメントを吸着しないので与える時間に制限がないことが気に入っていました。
リンの数値によって量を増減して調整できるところも良いのですが、難点は増やすともれなく下痢をすること。
それじゃリンが上がった今、レンジアレンを増やしましょうというのは無理な話。

そこでレンジアレンで補えない分をカリナール1などの他のリン吸着剤を併用する事でどうにかならないものかな?と獣医さんに相談しかけたところで、獣医さんからホスレノールの提案がありました。
同じこと考えてたのね。

ホスレノールは炭酸ランタンを主成分とするリン吸着剤で、炭酸カルシウムを主成分とするサプリや薬と比較してリン低下の効果が高くカルシウム値が上昇することもないので、カルシウムがやや高めだからという理由でカルシウム系のリン吸着サプリを避けていたたみでも安心して使えます。

たみは薬に過敏なので、最初は3分の1の量からスタート。
何事もなければ増量していきます。
今は朝夕にレンジアレン、お昼にネフガードを与えていますが、今後は朝昼夕にレンジアレンとホスレノール、寝る前にネフガードを与える計画。

リン吸着サプリについて

ホスノレールを飲ませてます!って人はあまりいないみたいなので、ほとんどの場合は食事療法とリン吸着サプリだけである程度の効果があるのかなと思います。
たみみたいに治療が長期になると色々と出てくるのかな。

低たんぱく・低リンの処方食から更にリンを減らすためにはリン吸着剤の使用が必要。
リン吸着剤にも種類があり、人間用はもっと色々ありますが、犬猫用はサプリメント扱いで、鉄とカルシウムの2種類の吸着剤が売られています。

たみが今使っていて、今後もホスレノールと併用するのは、レンジアレン
血液検査でのカルシウムの値が上限ギリギリだったり若干上限を超えている事があるので、カルシウムよりも鉄が良いと判断して当初からレンジアレンを選びました。

給与量は体重5kgあたり1日1包(4包まで増量可)とのことなので、3kgのたみは1日1/2包与えていましたが、リンの数値が上がってからは1日1包に増やしました。
これが下痢しないギリギリの量。

その他のリン吸着剤として病院で教えてもらったのは、カリナール1カリナールコンボイパキチンキドキュア(猫用・犬も可)。
これらはカルシウムが主成分です。
カリナールコンボ、イパキチン、キドキュアはリン吸着と腸管の毒素(BUN)軽減の作用があります。

色々ひっくるめて吸着してくれる活性炭サプリは、ネフガード(粒)、ネフガード(顆粒)。処方薬としてコバルジンやクレメジンもあります。

サプリについては以下の記事も合わせてお読みください。

犬の腎不全にサプリメントは欠かせないアイテムです【目的別に紹介】リン吸着剤の種類と使い分け【犬の腎不全治療】

活性型ビタミンD(カルシトリオール)の投与について

最後に、腎性二次性上皮小体機能亢進症の治療にはカルシトリオールの投与が検討されます。

カルシトリオールとは、腎臓で作ることが出来なくなった活性型ビタミンD製剤。
これを投与することで上皮小体ホルモンの過剰な分泌を抑えることを目的としていますが、投与の方法・タイミングを謝ると大失敗する恐れもあるのだとか。

多分、高リンの状態でカルシトリオールを投与する事で異所性石灰化を助長してしまうとか、そんな感じの失敗だと思いますが、その辺りはよく分かりません。

犬の腎不全の指標の中では、ステージ1~4のうちステージ3の治療のひとつとして、「カルシトリオールの治療の検討」と挙げられています。

ビタミンDといえば、鳥の飼育をする時に「ビタミンDを得るために日光浴を!」としつこいほどに言われます。
でもこのビタミンDは普通のビタミンDであり、日光浴などで得たビタミンDをカルシウムと結びつけるためには腎臓・肝臓に活性型ビタミンDに変えてもらわなければいけないんですね。

腎不全って末期にならないと劇的な症状は出ませんが、何となくダルそうなしんどそうな様子は初期の頃から見られます。
腎機能が回復することはなくても、点滴や給水、低たんぱく・低リン食などでケアしてあげることで腎臓への負担が減り、お散歩で走り回ったり明るい表情を見せてくれるようになります。

ゆっくりゆっくりと残りの腎臓を大切にしながら穏やかな日が一日でも長く続く様に、飼い主は日々勉強を続けます。

ってことでこれで理解したつもりですが、間違ってたら教えて下さいw

【参考】
宮川 優一(2015).慢性腎不全時におけるリンのコントロールの重要性 3.吸着剤の投与 動物臨床医学,24(3),108-110.
宮川優一 (2018).慢性腎臓病患者に対する食事管理 ペット栄養学会誌,1,52-54.
桑原康人 (2011).慢性腎臓病(CKD)の臨床的重要性と考え方 動物臨床医学,20(3),71-75.
Böswald, L, Kienzle, E & Dobenecker, B (2018) Observation about phosphorus and protein supply in cats and dogs prior to the diagnosis of chronic kidney disease. J Anim Physiol Anim Nutr 102, 31–36.