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猫のできもの(ピンク色)が顔に!皮膚型肥満細胞腫の検査と治療【とらじの場合】
うちの猫とらじ(8歳半)、ほっぺたに出来物を見つけました。
腎臓病のとらじには自宅で皮下点滴をしており、私はいつも点滴の間とらじの顔周りをヨシヨシしています。
その日もいつも通り触っていたら、左頬に何やらしこりが…。
位置的にヒゲの根元?とも思いましたが、毛をかき分けて見てみたら、ハゲてる。
反対側にはないし。
少し前に背中にも似たような出来物が出来て自然に消えたので同じようなものかな?とか、そんなに性格が悪そうな見た目ではない気がするものの、以前出来たものはゴマ粒サイズ。今回はいきなり米粒サイズ(5~7mmくらいの円形)。
心配なので病院に連れて行きました。
近くのリンパは腫れてないし見た感じもそこまで悪そうではないけど希望であればとのことで、細胞診をお願いしたところ、「肥満細胞腫」でした。
この記事にはとらじの肥満細胞腫の経過と検査~治療について記録がてらまとめていきます。
猫の顔のできものの検査
とらじのほっぺたに出来たものはこんな感じ。
もう8歳のおじさんだし老猫性のイボ?みたいな見た目です。
我が家の猫の出来物騒動は約1年前、同居猫テツ子の身にも起きました。
何となく性格が悪そうな出来物に思えたテツ子の出来物は良性。
とらじは肥満細胞腫。見た目では分からないものです。
肥満細胞腫と診断されたらまずは検査。
そのまま預けて、皮膚型か原発が内臓にないかの検査と、どちらにしても全身麻酔で手術はしないといけないので術前検査を行いました。脾臓型だった場合脾臓摘出摘出手術になるのだとか。
肥満細胞腫にはいくつか種類があり、とらじのように皮膚に出来た腫瘍を見つけた時に疑うべきケースはざっくりと分けて以下の3点。
- 皮膚型→皮膚にのみ出来た腫瘍。悪性腫瘍ではあるが切除すれば良性の挙動を示すことが多い。
- 脾臓型→脾臓に原発があり、皮膚に転移した可能性。脾臓と皮膚の腫瘍の摘出手術。手術すれば比較的良好な経過を辿るケースも多い。
- 消化器型→悪性度が高く手術は基本的にはしない。抗がん剤治療をするかどうかなど治療の計画を立てる。
預かり検査では手術に備えた全身の血液検査(外注)、血液凝固系の検査(脾臓の細胞診を行う際に大出血を起こさないように院内で即検査)、レントゲン、超音波検査(この検査の時点で脾臓の腫れなどが見られた場合は脾臓の細胞診は行わない)、脾臓の細胞診を行いました。
腫瘍の細胞診の際に肥満細胞からヒスタミンが放出されショック症状を起こさないよう抗ヒスタミン剤を投与。
抗ヒスタミン剤の影響で逆に腫瘍が小さくなって切除部位が分からなくなることもあるので患部を毛刈りしました。
検査結果は脾臓や肝臓の腫れはなく消化器も異常な所見は見られない。
以前からの超音波検査と比較しても変わりはなく院内での細胞診の結果脾臓には肥満細胞は見られないので、おそらく皮膚型の脂肪細胞腫。
確定的な診断をするなら皮膚の腫瘍の切除手術の前に細胞を病理に出すことも可能とのことなのでお願いしました。
検査中に嫌がって暴れたためトラゾドンを飲ませたそうで翌日昼まで足元がフラフラで心配だったけど、薬が抜けたら元通りになったので一安心。
10日後に出た病理検査の結果はやはり肥満細胞腫。
- 皮膚型の肥満細胞腫
- 良性の挙動を示すものが多く、本例も腫瘍細胞の多形性は軽度であり「高分化型肥満細胞腫」の範疇に含まれる
- 今回提出された脾臓細胞には肥満細胞腫の転移を示唆する所見は認められない
という内容でした。
治療としてはほっぺたにある肥満細胞腫の切除をすれば良く、テツ子の時と違い患部が顔なので全身麻酔。
腎臓病ではあるものの数値はとても落ちついた状態なので手術は可能。
とのことで以前から麻酔のリスクと天秤にかけて保留にしていた歯肉炎治療のためのスケーリングと併せて全身麻酔下で肥満細胞腫の切除手術を行うことにしました。
肥満細胞腫の切除手術とスケーリング
腎臓が悪いとらじの場合、本来なら前日から入院させて静脈点滴を流した上で麻酔をかけることが望ましいものの、夜間は病院が無人になること、とらじは下半身に軽い麻痺があり普通の猫のように自分でトイレで用を足すのが難しいこと、カテーテルを入れるという手もあるけれど自宅で皮下点滴が出来るので、とらじのQOLを考えて前日入院は避けることに。
手術までの段取りは手術前日に自宅で皮下点滴、前日22時から絶食(水は当日朝まで)、当日朝預けてすぐに静脈点滴を流して昼からの手術に備えるという流れに。
肥満細胞腫の手術について検索したところ、レーザーで切除する病院もあるようで、かかりつけの病院でも出来物などをレーザーで焼く処置はしているので手術の方法について質問したところ、今回は切り取って縫うとのこと。
癌だけど顔なのでそこまでマージンは取らず、猫の肥満細胞腫の場合マージンを大きくとったところでそれほど差はないのだとか。
切除した腫瘍を更に病理に出すかどうかは私の希望次第で、病理に出して分かることといえばきちんとマージンとれてますねということと、やっぱり肥満細胞腫でしたねということくらいだとか。
とらじは以前アモキクリアを飲んで吐いたことと注射の抗生剤コンベニアは腎臓への負担が大きいので除外し、他の抗生剤を使うことに。
手術の結果と術後の様子
手術は無事終わり、夕方お迎えに行きました。
傷口はこんな感じ。
とらじは後ろ足が悪いのでガツガツ掻くことはなさそうだけど前足でこすりそうなので要注意。
あと同居猫テツ子が舐めないか…。
病院でつけてもらっていたプラスチック製のカラーの方が良いとは思うけど、とらじの仕様だと何かと不自由があるので前回テツ子の手術後に使っていたカラーをつける許可をもらいました。
今回の手術で、術前には分からなかったことがふたつ判明。
ひとつは切除予定の肥満細胞腫の横の皮内にもう一つしこりがあったこと。
一緒に切除して病理に出すことになりました。(↓クリックで拡大)。
もうひとつは歯肉炎の赤みだと思っていた部位が「吸収病巣」という猫特有の病変だったこと。
既に歯根は溶けていてすぐに抜けたそうです(↓クリックで拡大)。
帰宅後はまず誤嚥しないか確認するため少量の水かスープを飲ませて、大丈夫そうならウェットフードと抗生剤を飲ませるようにとの指示を受けましたが、家に帰るなり
僕ごはん食べてない!!!
とパニック状態に。
用意したウェットフードのスープではなく具の方をもっともっとと食べ、なんと抗生剤までバリバリ食べた!
落ち着いてからは家族のいるリビングや普段寛いでいる私のベッドに移動して、
あーやだった…
と一息。
抗生剤(セファクリア)は1日2回5日間。
手術翌日の朝、自宅で皮下点滴(その後は普段と同じ間隔で良い)。
もし水を大量に飲むとか嘔吐下痢など変わった様子が見られたら即受診。
術後~抜糸まで
術後2週間したら抜糸とのことで、その間はずっとエリザベスカラーをつけて過ごしました。
術後5日目、傷口に若干の異変が。
縫合糸が切れてはいないものの傷に赤みが出て、傷の真ん中あたりの皮膚が乾燥して裂けているように見えます。
浸出液や傷周辺の波動感はないものの抜糸までまだ1週間以上あるので念のため受診。
診察の結果、傷の治りは順調で一安心。
せっかく来たからということで皮膚用の接着剤をつけてくれました。
受診しなくても良かったかもしれませんが、きれいになった傷は私の精神衛生上とても良く、また抗生剤の影響で下痢気味だったので整腸剤(ビオイムバスター)と下痢止め(ディアバスター)を処方してもらえたので連れて行って正解でした。
下痢は下痢止めを2回飲んで収まり、整腸剤は5日間飲みきり。
その後は何度か吐いたのが気になるものの、特別大きな問題はなく2週間後(獣医さんのシフトの関係で16日後)の抜糸へ。
抜糸前日の傷の様子。
抜糸直後↓
まだ少し痛々しいですが、傷はきちんと塞がっているのでエリザベスカラーも外して良いとのこと。
抜糸翌日↓
何だかちょっと傷が湿り気を帯びていて心配…
抜糸から3日後、乾いてきれいになってきた!
抜糸から5日後。とてもきれい。
術後からきれいに治るまでの間、何かあれば受診するつもりだけど少しでも参考資料が欲しいと画像検索しまくったもののなかなかこれという資料が見つからず、猫に噛まれた人間の傷が出てきたりして。
なので参考までに傷口の写真を載せておきました。
苦手な方、ごめんなさい。
病理検査・術後検査の結果
腎臓への負担が心配だったので、抜糸当日に腎臓の検診も受けました。
院内でSDMAの検査を出来るようになったので通常のBUN・Creではなく今回はSDMAのみ。
基準値14以下のところ12と、普段と変わらない結果で一安心。
超音波で見た様子もいつも通りなので、次回は3ヶ月後の検診。
手術で切除した腫瘤2つの病理検査も術前の検査と相違なく、高分子型の肥満細胞腫で完全切除出来ているとのこと。
肥満細胞腫の隣にあったしこりも病変ではないただの毛根だったので問題なし。
というわけで肥満細胞腫の治療は無事完了ということになりました。
良かった良かった。
肥満細胞腫の切除手術の費用
今回、肥満細胞腫の検査~切除手術にかかった費用は
- 術前に行った初再診・細胞診・病理検査・レントゲン・超音波で55,880円
- 手術当日の再診料・麻酔・手術・病理検査・抗生剤で約75,000円(+スケーリング・抜歯・口腔内縫合処置)
- 途中で受診した際の再診料・処置料・整腸剤・下痢止めの処方で3,740円
- 抜糸1,000円
以上、約136,000円でした。
とらじは保護猫として家に来た時点で何かと疾患が多くペット保険に加入出来ないので全部自費(プライスレス!)。
腎臓が悪いから薬や麻酔下での治療をせずに済むようにと願っていたのに…と悩んだりもしましたが、今回腎臓が悪いなりにも全て正常値というとても安定しているタイミングで皮膚型肥満細胞腫の切除と歯肉炎だと思っていた吸収病巣の手術を同時に出来たことは良かったと思います。
術後の経過も良好で一安心。これからもメンテナンスをしながら元気に過ごしてほしいです。