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リン吸着剤の種類と使い分け【犬猫の腎臓病(腎不全)治療】
腎臓病が進行すると、血中のリンが上昇します。
治療の中で定期的に血液検査を受け、BUNやクレアチニンの数値に一喜一憂してしまいがちですが、リンの数値が上がってきたと指摘されたらまた新たな対策を考えなければなりません。
リンが上昇すると何がどうして悪いのか?という事に関しては以下の記事に。
腎臓病用の療法食は低たんぱく・低リンになっているのでごく初期の腎臓病の場合は対策は必要ありませんが、ある程度ステージが上がり、リンの数値が怪しくなってきたらリン吸着剤の使用を検討する時期だと判断した方が良いと思います。
近頃では「FGF23(Fibroblast Growth Factor 23)」という数値を測ることによって、リンの数値に変化が見られるよりも前にリンの腎排泄の低下を調べることが出来るようになりました。
以前は富士フイルムへの外注検査だけだった気がしますが、2023年からはIDEXXでも検査が可能になったのでより多くの病院で利用できるのではないかと思います。
このFGF23は血中のリンの調整をするホルモンで、腎機能が低下し腎臓からリンをうまく排泄出来なくなってくると、「リンを減らしなさい!」と指令を出すために分泌されます。
そのFGF23の数値を測ることによってより早くリンの排泄低下に気付き、リン吸着剤の使用や低リン食を開始する目安になるというもの。
既にリンが高い子には必要ない検査ですが、ステージ1とか2の早期に腎臓病を発見してきっちり管理するなら有効な検査かなと思います。
たみの場合はリンが基準値の上限ギリギリくらいまで上がってきた頃から「まだいらないんじゃないかな?」と言われつつもリン吸着サプリ(レンジアレン)の使用を開始し、治療2年目の後半頃に基準値を超え始めてからはレンジアレンを最大量を与え、更にレンジアレンとは別の成分のリン吸着剤(処方薬)ホスレノールと併用をして維持していました。
リン吸着剤は数種類あり、その成分や吸着率にも違いがあります。
体質や血中のカルシウム値などによっても使い分けが必要であり、それぞれに相互作用のある薬剤があるので、まずは獣医さんに相談してみましょう。あまりに早期からのリン吸着剤の仕様は低リン血症を引き起こしかねません。
リン吸着剤の種類
リン吸着剤は、消化管内で食餌中に含まれるリン酸と結合しウンチと一緒に排出させることで体内のリン蓄積を防ぐ目的で使用します。
リン吸着剤には、
- アルミニウム製剤
- カルシウム製剤
- 鉄製剤
- 塩酸レベラマー
- 炭酸ランタン
以上の5種類があります。
この中でアルミニウム製剤は一番最初にリン吸着剤として誕生したもので、腎臓病患者の場合はアルミニウムの蓄積によるアルミニウム脳症などを起こす可能性があるため現在は使用が禁止されています(たまに犬猫にも処方される胃薬のスクラート(スクラルファート)もアルミニウムが含まれているため禁忌です)。
また、塩酸セベラマーは人間ではよく使われる様ですが、私は実際に使った事がないので今回は除外します。
というわけで、
- カルシウム製剤
- 鉄製剤
- 炭酸ランタン
について私の頭を整理するためにもちょっとここにまとめておこうかなと思います。
間違ってるかもしれないので、何となく頭に入れておいて、あとは獣医さんに聞いて下さい。
カルシウム製剤
カルシウムを主成分としたリン吸着剤は、人間用ではアルミニウム製剤の次に古くから使われています。
動物用では、「カリナール1(終売)」「カリナールコンボ」「イパキチン」「キドキュア(猫用・犬も可)」「プロネフラ」がカルシウムを主成分としたリン吸着サプリメントです。
「カリナール1」はリン吸着のみ。
「カリナールコンボ」「イパキチン」「キドキュア」「プロネフラ」は、リン吸着と、腸管内の環境を整える事で尿毒素(BUN)の軽減にも貢献してくれます。
現状で血液検査のカルシウム値が高い場合は、カルシウムの摂りすぎにより異所性石灰化など他の問題が起こる事もあるので、獣医さんと相談の上イオン化カルシウムの値を調べてもらったり、他の吸着剤の使用を検討した方が良いかなと思います。
活性型ビタミンD(カルシトリオール)の投与治療をしている場合は併用禁止。
テトラサイクリン、ニューキノロン系抗菌薬も吸収を阻害するため、同時使用は避けます。
鉄製剤
鉄製剤は現在人間のリン吸着剤として一番新しく、クエン酸第二鉄を使用したものが使われています。
動物用のサプリメントとしては、塩化第二鉄を使用した「レンジアレン(終売)」が病院でもよく処方され、たみはリンの値が正常値の上限ギリギリになった頃からずっと使っていました。
鉄なので、貧血気味の患者にも有効とのこと。
※レンジアレンは2023年夏で終売になり、同じ成分の「リンケア」というサプリメントがヘルスビジョンから発売されました。
リンの数値により給与量を4倍まで増量することが出来ますが、たみの場合規定量以上に増やすともれなくウンチゆるゆるになるのが悩ましいところ…。
後述しますが、副作用に便秘をおこしがちなホスレノールと併用するようになってからは副作用と副作用のコラボで快便になりました(笑)
レンジアレンもカルシウム系のリン吸着剤と同様、一部の薬剤の吸収を阻害するおそれがあるため、甲状腺ホルモン製剤、ニューキノロン系抗菌薬、テトラサイクリン(抗生剤)の同時摂取は避けます。
前述のFGF23はクエン酸第二鉄を投与することで低下するというデータも出ているので、獣医さんと相談の上人間用の鉄製剤「リオナ」の使用を検討することも一つの手かなと思います。
炭酸ランタン
たみの場合はカルシウム製剤はカルシウム値が高いので使えない、「レンジアレン」を増量すると下痢になる、サプリメントではどうにもこうにもリンが下がらない…という状況になった時に獣医さんの提案で炭酸ランタンを主成分とした「ホスレノール」という薬をレンジアレンと併用し始めました。
これまでに挙げたリン吸着剤はサプリメント扱いですが、ホスレノールは処方薬です。
炭酸ランタンは非アルミニウム・非カルシウム製剤で、リン吸着力が非常に強く、動物ではあまり使われないそうですが人間の腎臓病の患者さんでは多く使われているリン吸着剤。
カルシウム系のサプリを使えて効果が出る子、レンジアレンを増やしても下痢にならない子は薬よりもサプリメントを選択する方が良いと思いますが、たみの様ににっちもさっちもいかない状況ならホスレノールを選択する事も考慮すると良いのかなと思います。
副作用としては食直前など空腹時に服用すると、「うっ…」と吐きそうな素振りを見せるので、食事に完全に混ぜて与えています。
人間の場合は、食直後(食後5分以内)の服用を指示されるそうです。
比較的新しい薬であり、動物での使用例があまり多くないので、長期使用による臓器への蓄積などの影響については不明瞭だそうですが、たみの場合は超高齢犬なので残りの犬生を考えても特に大きな問題はないと割り切っています。
ちなみにたみは前述の通りレンジアレンと併用しているのですが、ホスレノールの副作用(便秘)とレンジアレンの副作用(下痢)の相乗効果でとっても良いウンコを出してます。
ホスレノールのおかげで1日1包でもゆるゆるだったレンジアレンを、1日2包(最大量)与えられるようになりました。
「薬」であるホスレノール(炭酸ランタン)はリン吸着の作用がとても強く、リンが上がってきてサプリメントではもう下がらない!試してみたい!でもかかりつけの病院では取り扱ってない!ということがありがち。
我が家のかかりつけでは常備してあり先生の方から提案して下さったので助かりましたが、置いていない、使ったことがない病院もまだ多いと思います。
某質問掲示板で「炭酸ランタンを個人輸入すると良い」という回答を見たことがありますが、何のための「処方薬」なのでしょうか。
ホスレノールには副作用があります。適切な用法・用量があります。
人間の腎臓病の患者さんでも「合わない」ということがある薬です。
飲ませて万が一のことがあった時、かかりつけの病院で診察拒否されても文句は言えません。
会ったこともないどこの誰だか分からないそのアドバイスをした人も責任を取ってはくれません。
本当にそれが犬猫のためになることなのか、よく考えて行動した方が良いのではないかなと思います。
リン吸着剤の飲ませ方
これまでに挙げたリン吸着剤は、既に血中にあるリンを吸着するのではなく、食餌中のリンを吸着してウンチと一緒に排出しましょうというものです。
動物用のサプリメントの使い方としてはあまり詳しくは説明されていないのですが、人間では
- 食後すぐに服用
- 食事をしなかった時は服用しなくて良い(飲み忘れた場合は食後30分以内ならすぐ服用する)
- 食事量(リンの量)によって服用量を増減する
「食事と一緒に」というのが大原則。
たみは1日2食だったところ一度に食べられる量が減ったため最近は1日3食にしたので、レンジアレン・ホスレノールも食事の回数に合わせて3回の投与です。
わりと誤解されがちですが、リン吸着剤は体内のリンを減らすものではなく、今食べるご飯に入っているリンを減らすサプリメント(薬)と考えると良いかなと思います。
主成分によって併用に注意が必要な薬もあり、「今飲んでる薬と併用しても大丈夫ですか?」と何故か私に聞いてくる人がいるのですが、それは薬を処方した獣医さんに確認しましょう。
まずはかかりつけの獣医さんにどの種類のリン吸着剤を選ぶと良いのかを相談することをおすすめします。
リン吸着サプリメント・リン吸着剤は腎不全治療の中でもとても重要なアイテムなので、上手に使っていけると良いですね。
【参考】
慢性腎不全時におけるリンのコントロールの重要性
慢性腎臓病患者に対する食事管理
慢性腎臓病(CKD)の臨床的重要性と考え方
CKD-MBDを意識した 保存期腎不全患者のリン管理
保存期腎不全のミネラル代謝異常